こんにちは。京都市の工務店、ナチュラルデザインの代表、合田太一です。
今年5月5日のブログで「ナフサショック」についてお伝えして以来、多くのお客様から「あれからどうなっているんですか?」というご質問をいただいています。
打ち合わせの席でも、「ニュースではナフサが急落って言ってるのに、なぜ家が安くならないんですか?」と聞かれることが増えました。
正直に、そして丁寧にお答えしたい。それが今回このブログを書いている理由です。
2026年3月、ホルムズ海峡の問題を背景にナフサ(住宅建材や設備の原料となる石油化学製品)の価格が急騰し、住宅業界にも大きな波が押し寄せました。あれから約4ヶ月が経ちます。
「ナフサの価格が下がったとニュースで見た」「ホルムズ海峡の問題も合意があったと聞いた」—— そうした情報が届いているからこそ、「じゃあもう大丈夫なの?」と感じる方が多いのは、ごく自然なことだと思います。
ところが、現場の実態はそう単純ではありません。
さらに言えば、つい最近になってホルムズ海峡周辺で再び封鎖や緊張が高まるニュースが報じられるなど、情勢は今なお激しく流動しています。一度は和らいだかに見えた地政学的リスクが再び燻り始めているのが、リアルな現状です。
イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」海軍は現地時間12日未明、ホルムズ海峡の閉鎖を発表した。発表の前には、許可されていない航路を使って海峡を通過しようとした船舶に警告射撃を行ったという。
CNN.co.jp「イラン、ホルムズ海峡の閉鎖を宣言 全船舶の通航認めず」(2026年7月12日)
このブログでは、こうした新たな動きも含め、2026年7月現在のナフサショックの「今」を、正直に、分かりやすくお伝えします。また、こうした状況の中でナチュラルデザインとして何を考え、何をしているのかも、同時にお話しできればと思います。

ナフサ価格は「急落」したのに、なぜ住宅は安くならないのか
前回のブログでは、ナフサとは原油を精製する際に生まれる中間素材で、住宅の断熱材・防水シート・配管・塗料・樹脂サッシなど、建材のあちこちに使われているとお伝えしました。今回はその「続き」です。
5月初旬の時点では、ナフサ国際価格は1トンあたり1,000ドルを超え、過去に例のない高騰が続いていました。それが6月に入ると、一転して約26%急落し、700ドル台半ばまで下がっています。
「では危機は終わったのでは?」と思いたいところですが、残念ながら、そう簡単ではありません。

価格が下がった「本当の理由」が問題
今回の急落は、供給がスムーズに回復したからではありません。
主な要因のひとつは「需要破壊」と「需要後退」です。
需要破壊とは、価格が上がりすぎて「もう買えない・買わない」企業や工場が増え、買い手が大幅に減ってしまう現象です。
「値段が下がった=危機が解消した」ではなく、「高値を払える体力のある企業が減ってきた結果、価格が下がった」という、状況の深刻さを物語る側面もあります。
また、米国など中東以外からの代替調達が増えたことで供給量自体は一部回復していますが、石油化学工業協会(石化協)の発表によると、日本国内のエチレン(ナフサから作られる石油化学の基礎原料)生産設備の稼働率は2026年4月時点で67.3%と、過去最低水準を記録しました(注:稼働率90%が業界の好不況の目安とされています)。
これは「作れないから稼働率が下がっている」のではなく、「供給を続けるために安定操業を優先しながら稼働率を下げている」という側面が大きいと、石化協会長も述べています。
さらに、「割高な原料在庫を抱えた後で価格が下がると損失になる」というリスクを恐れて、メーカーが慎重になっている面もあります。業界では「価格指標は下がっているが、現物は思うように手に入らない」という二重構造が6月時点でも続いているとされています。
円安と値上げのタイムラグも見逃せない
ナフサ価格はドル建てで取引されます。5月下旬から6月にかけて円安がさらに進んだことで、ドル建ての価格下落分が円換算では一部相殺されており、日本の建材業者が実感するコスト改善は、国際市場の数字ほどではないのが実態です。
さらに、ナフサの価格変動が建材メーカーの出荷価格に反映されるまでには、1〜3ヶ月のタイムラグがあります。3月から5月にかけて高騰したナフサのコストは、今まさに建材各社の価格に転嫁されているタイミングです。
価格表の書き換えが一斉に進んでいる——それが「2026年7月の今」の現実です。
ひとつの例として、断熱材や防水材の一部では、4月に「1週間後から40%値上げ」という突然の通知が届いたケースも業界内で報告されています。変動が大きく、見通しの立てにくい状況が続いていることを、正直にお伝えしておきます。

住宅に関わる建材・設備で、今何が起きているのか
建材・設備メーカー各社の対応状況を整理すると、状況は「供給停止の危機」から「価格改定の本番」へと移行しています。
4月から5月にかけては、TOTO・ハウステック・クリナップなど主要メーカーが相次いでユニットバスや住宅設備の受注を停止・制限しました。
その後、代替調達や政府の石油備蓄放出(2026年4月時点で累計約65日分)の効果もあり、多くのメーカーで受注は徐々に再開されています。
ただし、問題の焦点が「納期」から「価格」に移っています。
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主な建材カテゴリ別の現状(2026年6月〜7月)
6月以降に判明している主な価格改定の傾向は、以下のとおりです(各社の公式発表・業界報道をもとに整理。個別の仕様や発注時期によって実際の影響は異なります)。
- ■断熱材
最大40〜50%程度の価格改定が進行中とされています。ナフサ由来の発泡剤や樹脂に大きく依存しているため、今回の影響を最も深く受けているカテゴリのひとつです。 - ■ルーフィング(屋根の防水下地材)
40〜50%程度の値上げが発表されています。この材料が届かないと屋根工事が止まるため、建築工程上も影響が大きい資材です。 - ■塗料・シンナー
カテゴリによっては最大80%程度に達する改定も報告されています。溶剤系塗料の原料はナフサ由来の比率が高く、特に影響が大きく出ています。 - ■配管材(塩ビ管など)
12〜20%程度の値上げが確認されています。給排水管に使われる塩化ビニル樹脂もナフサを原料とするためです。 - ■石膏ボード
内装の最終工程で使われる内壁材にも、20%前後の改定の動きが出ています。ほぼ全室に使われる資材のため、1棟あたりの数量が多く、積み重なると影響は小さくありません。 - ■住宅設備(システムキッチン・洗面など)
一部メーカーでは8月以降の受注から15%前後の値上げが予定されているケースがあります。
これらが一棟に積み重なるわけですから、住宅全体のコストへの影響は無視できない規模になる可能性があります。
具体的な影響額は個別の仕様・設計内容によって大きく異なるため断定はできませんが、参考情報として、建材コストの上昇が総額で相当な規模に及ぶ可能性を指摘する業界報道も出ています。ご自身のケースについては、個別の確認が大切です。
打ち合わせ中のお客様には、現在の資材状況を正直にお伝えしながら、見積りの根拠と今後の変動リスクについても、できる限り丁寧にご説明するよう努めています。

ホルムズ海峡「合意」の後に起きた現実と、これからの見通し
2026年6月中旬、米国とイランの間で戦闘終結などに向けた覚書の合意が発表され、日本政府もこれを事態収束への大きな一歩と評価しました。一時は建材コストの安定化につながる前向きなニュースとして期待が集まったのも事実です。
しかし、国際情勢は私たちが想像する以上のスピードで急変しています。直近のニュースでも報じられている通り、ホルムズ海峡を巡る緊張は再び高まり、海上封鎖の懸念や対立の再燃という事態に直面しています。
仮に一時的な合意があっても、それが住宅の建材コストや流通の正常化に反映されるまでには、もともと数ヶ月単位のタイムラグが生じる構造でした。そこにきて今回の再度の緊迫ですから、寸断されたサプライチェーン(原料調達から建材完成品が手元に届くまでの連鎖)の回復には、さらに先行き不透明な時間がかかると見ざるを得ません。
「合意が出たから、もう安心」という楽観論は瞬く間に覆され、現在は「常に状況が激変するリスクを前提に動かなければならない」というのが、建築の最前線にいる私たちの正直な現場感覚です。
予測のつかない世界情勢の波だからこそ、私たちは一喜一憂することなく、起きた事実に即座に対応できる備えを常に進めています。

こうした状況で、ナチュラルデザインが取り組んでいること
価格の波はコントロールできません。
しかし、その波の中でどう判断し、お客様の家づくりをどう守るか——それは私たちが考え続けることです。
情報を早く、正確に把握して仕入れに動く
建材メーカーからの価格改定通知が来るたびに、内容を精査し、何が値上がりするのか、代替品はあるか、どのタイミングで確保するかを確認しています。
標準仕様に使う主要な資材については、できる限り早めに確保する段取りを進め、打ち合わせ中のお客様への影響を最小限にする努力をしています。
一方で「すべて防げる」とは申しません。全体的なコスト環境が変化しているのは事実であり、それを正直にお伝えすることも大切だと考えています。

標準性能は守りながら、予算の整理を一緒に行う
コスト環境が厳しくなったからといって、耐震等級3・UA値0.46以下の断熱性能・C値0.3以下の気密性能という基本性能を下げることは、ナチュラルデザインとしては選ばない道です。
性能を落として短期的な価格を下げることは、長く住み続けることを考えたときに、かえってお客様の損失になりかねないと考えているからです。
代わりに私たちが力を入れているのは、「削るべきところと守るべきところを整理する」という資金計画の話し合いです。
建材の値上がりを受けて、どこを見直すか、どこは変えないか——そこを丁寧に一緒に考えることが、今の時期に私たちができる大切な支援だと思っています。

補助制度の活用も、一緒に整理します
現在、「みらいエコ住宅2026事業」(国土交通省・経済産業省・環境省が連携して実施する補助制度)が動いています。
省エネ性能の高い新築住宅を対象とした補助制度で、住宅の性能区分や世帯要件によって補助額が異なります(例:長期優良住宅で75万円、ZEH水準住宅で35万円など)。なお、長期優良住宅・ZEH水準住宅の補助は「子育て世帯または若者夫婦世帯」が対象となります。
注文住宅(ZEH水準)の交付申請受付期限は「2026年9月30日まで(予算上限に達し次第終了)」、予約期限は「2026年8月17日まで」と定められています。スケジュールには余裕を持って動くことが大切です。

ナチュラルデザインが建てる住宅は、長期優良住宅認定を全棟で取得しております。
もちろん、みらいエコ住宅事業の対象になります。
ただし、補助金の適用条件・金額は世帯状況や住宅仕様によって異なります。ご自身のケースへの適用可否は、公式サイトで確認しながら、ご相談の際に一緒に整理しましょう。
この記事のまとめ
2026年7月現在、ナフサショックの状況は「最悪期の急騰・受注停止」から「建材価格改定の本番」へと局面が移ってきています。
ホルムズ海峡に関する合意のニュースは前向きな変化ですが、サプライチェーンの正常化には時間がかかる見込みで、建材コストへの影響はすぐに解消されないと考えておくのが現実的です。
整理すると——
- ナフサ価格は急落したが、それは「危機の完全な終わり」ではなく、需要後退や代替調達拡大などが複合した結果
- 建材・設備の値上げは2026年6月以降が「本番」であり、住宅コストへの影響はこれからも続く可能性がある
- ホルムズ海峡の合意は事態収束への一歩だが、建材価格への反映まで数ヶ月のタイムラグがある
- 補助制度(みらいエコ住宅2026事業)は動いており、注文住宅ZEH水準の申請期限(2026年9月30日)が迫っているため、早めの確認が望ましい
こうした時期だからこそ、「待てば下がるはず」という漠然とした期待より、「今の状況で自分たちはどう動くか」を具体的に整理することが大切だと感じています。
不安を一人で抱え込まず、まずは現状を一緒に確認することから始めてみてください。

※本記事は2026年6月末〜7月初旬時点の情報をもとに作成しています。建材価格・補助制度の内容や受付状況・中東情勢は今後も変動する可能性があります。最新状況は各メーカー・制度の公式サイト、またはナチュラルデザインへ直接ご確認ください。
引用元・参照元
- 石油化学工業協会「2026年4月のエチレン生産設備稼働率(速報)」(時事通信・日刊工業新聞による報道)
https://www.jpca.or.jp/statistics/monthly/memo.html - 首相官邸「米・イラン双方が戦闘終結などに関する覚書に合意した旨発表したことについての会見」(2026年6月15日)
https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/0615kaiken.html - プラスチックパレット株式会社「ニュースで聞く『ナフサ・クライシス2026』をやさしく解説【2026年6月版】」
https://plastic-pallet.co.jp/naphtha-crisis-explained-2026/ - プラスチックパレット株式会社「建設・物流・包装資材 値上げ一覧 2026年6月」
https://plastic-pallet.co.jp/price-hike-construction-logistics-materials-20260501/ - 住むを楽しむ「スムタノ」「ナフサショックが与える住宅設備業界への影響は?」(2026年6月)
https://www.sunrefre.jp/sumutano/housing-equipment/17415/ - 屋根修理テイガク「建材資材の値上げと受注停止の影響」(2026年6月25日更新)
https://yanekabeya.com/201086/ - ごりお【化学業界解説】「ナフサ価格が急落【6/8〜12週間振り返り】」(2026年6月14日)
https://note.com/goriochem/n/ne8d0a59d6588/ - みらいエコ住宅2026事業 公式サイト(国土交通省・経済産業省・環境省)
https://mirai-eco2026.mlit.go.jp/ - 国土交通省「みらいエコ住宅2026事業について」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000310.html
よくある質問〈FAQ〉
Q1. ナフサ価格が下がったと聞きましたが、これからは住宅が安くなりますか?
A. すぐに安くなる可能性は高くないとみられています。今回の価格急落には「需要後退」や「代替調達の拡大」など複数の要因が絡んでいます。
外殻、5月以降に各建材メーカーが発表した値上げは、2026年6月〜8月にかけて順次反映されている段階です。ナフサの国際価格が下がっても、その恩恵が建材の出荷価格に届くまでには数ヶ月かかるとされています。
現時点では「急騰の最悪期を脱した可能性はあるが、住宅コストは高止まりが続く可能性がある」という状況です。
Q2. ホルムズ海峡の合意ニュースを見ました。これで影響は収まりますか?
A. 合意は事態収束に向けた前向きな一歩です。ただし、建材価格が実際に落ち着くまでには、石油・ナフサの輸送再開→メーカーの生産回復→建材流通の正常化という段階を経る必要があり、数ヶ月のタイムラグが見込まれます。
合意内容の確実な履行とサプライチェーンの再構築が進むことを確認しながら、引き続き状況を注視しています。
Q3. 家づくりを今進めるべきか、もう少し待つべきか迷っています。
A. 「待てば状況が改善する」という確証は、現時点では難しい状況です。一方で、今すぐ急ぐ必要もありません。
大切なのは、まずご家族の生活状況・資金計画・必要な時期を整理することです。その上で、補助制度のスケジュールや金利の動向なども踏まえ、ご家族にとって最適なタイミングを一緒に考えることがナチュラルデザインとしてできることです。
「いつ」と「いくら」の両方を整理するために、まず相談の場を持っていただくことをおすすめします。
Q4. みらいエコ住宅2026の補助金を使えるか知りたいです。
A. ナチュラルデザインが建てる住宅は長期優良住宅認定を全棟で取得しており、みらいエコ住宅2026事業との親和性があります。長期優良住宅の場合、補助額は75万円(一般的な地域の場合)となりますが、対象となるのは「子育て世帯または若者夫婦世帯」に限られます。
補助額・対象条件は世帯の状況や住宅の仕様によって異なり、申請期限にも注意が必要です。ご自身のケースへの適用可否については、最新の公式情報をご確認のうえ、お気軽にご相談ください。
※補助金制度の内容は変更される可能性があります。最新情報は必ずみらいエコ住宅2026事業の公式サイトでご確認ください。
Q5. ナチュラルデザインの住宅価格も上がるのですか?
A. 正直にお伝えします。建材全体のコスト環境が変化しているため、それが見積りに影響する可能性は否定できません。
ただし、耐震・断熱・気密の基本性能は守り続け、「どこを見直し、どこは変えないか」を一緒に整理する資金計画の話し合いを大切にしています。コスト面のご不安も含め、現状と選択肢を一緒に確認させてください。
ナチュラルデザインの施工エリアについて
ナチュラルデザインでは、お引き渡し後の定期点検や万が一のトラブルへのご対応も、私たちが直接お伺いできる距離感を大切にしています。そのため、事務所から車で1時間圏内を主な施工エリアとしています。
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